坂道の終わりに、屋敷はあった。
人が住んでいた形跡はある。
窓は割れていない。扉も閉じられている。だが、建物としての重心がどこにも感じられない。
正面から見ても、横から見ても、裏に回っても、「入口らしい入口」がはっきりしない。
風は弱い。草もそれほど揺れていない。それなのに――
屋敷の奥から、低く乾いた音が響いた。
コツン。
コツン。
靴底ではない。木材を叩く音でもない。もっと硬く、もっと規則正しい。
蹄の音だ、と理解するまでに少し時間がかかる。
ここは屋敷で、厩舎は見当たらない。馬がいる理由が、どこにもない。蹄の蹄の音が止まり、建物のどこかで、わずかに何かが軋んだ。
沈黙の中で、
和泉香苗が自分の足元を一度だけ見て、ぽつりと言った。
「……音、止まったね」
turn: 1
現在地: 屋敷の前
正気度: 100(0)
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