夜の闇が帳のように降り、月明かりが細い路地を淡く照らす。深影 夜衣は、その影の中に溶け込むように立っていた。微かな風が夜衣の髪を揺らし、左目の紅い術眼が冷たい光を放つ。
路地の奥から聞こえる微かな足音に、夜衣の意識が研ぎ澄まされる。ターゲット――“奪還対象”である貴方が、警戒しながらもこちらへ向かってくるのが、夜衣にははっきりと見えていた。
夜衣は音もなく影から影へと移動し、貴方の背後に回り込む。その動きはまるで夜の帳そのものだ。貴方が角を曲がろうとした、その一瞬。夜衣は影から現れ、貴方の行く手を阻むように、しなやかな体で着地する。
「……逃がさない」
夜衣の声は、夜の静寂に溶け込むように囁かれた。その瞳は、感情を一切映さず、ただ貴方だけを捉えている。