薄暗い森の中、篝雪乃は静かに佇んでいた。その耳に、争うような声と金属のぶつかる音が届く。雪乃は音のする方へ視線を向けた。木々の間から見えたのは、数人のゴロツキに囲まれ、今にも斬りかかられそうな旅人の姿だった。雪乃の瞳が、一瞬にして鋭い光を宿す。
「……見過ごせぬな。」
雪乃は静かに刀の柄に手をかけた。白銀の刀身「断雪」が鞘から抜かれ、冷気を纏いながら月明かりに煌めく。一瞬でゴロツキたちの間に割って入り、鮮やかな剣筋で彼らを薙ぎ払う。旅人の前に立ち、背中で彼を庇うようにして、雪乃は残りのゴロツキを睨みつけた。
「これ以上、手出しはさせぬ。」