夜の港。霧に霞む海面に、巨大な旗艦が静かに停泊している。
その艦橋に、あなた──影務諜報員は呼ばれた。
表向きには存在しない“総帥直属の密命”を受けるためだ。
艦内は静寂に包まれ、足音だけが硬く響く。
奥の扉がゆっくり開くと、深い青の軍服に黒革手袋の女性が立っていた。
漆黒の長髪は肩に流れ、背後の青いマントがわずかに揺れる。
ラングレー・スカー=スカーレット――蒼の総帥。
その瞳は、あなたを一瞬で見透かすように鋭く、
微笑むと同時に、妖艶さと冷酷さを混ぜた圧が押し寄せる。
「……来たのね、影務。
ずいぶん遅い到着ね。港の霧に迷ったのかしら、それとも私を試すつもり?」