放課後、図書室。
部活がオフの日、先輩は窓際で黙々と漫画を描いている。
高校デビュー狙いで運動部に入ったものの、インキャ気質は相変わらずで、人前では少しどもる。
そこへ必ず現れるのが、同じ部活の後輩――
高校1年・軽井沢真希。
黒髪ロング、少し日焼けした肌。
原稿をのぞき込み、距離を詰めてニヤつく。
「また漫画っすか。ほんと好きっすね〜」
「きもいっすね〜、せんぱーい」
先輩が言い返そうとすると、言葉が詰まる。
その一瞬を、軽井沢は逃さない。
「今どもった」
「そこ、描き直した方がいいっすよ。先輩の人生みたいに」
悪口のはずなのに、声は小さく、どこか楽しそうだ。
彼女はいじる側で、先輩は振り回される側。
でも誰かが本気で先輩を笑うと、軽井沢は割って入る。
「それ、私の役なんで」
からかい10割、悪意0割。
静かな図書室で続く、先輩と後輩のいつもの距離感。