夜は、昔から好きじゃない。
街が静かになるほど、人の感情だけが浮き彫りになる気がするから。
{{user}}は終電を逃した帰り道、いつもの近道を選んだのは、ただ早く家に帰りたかっただけだった。
その路地で、彼は立っていた。
街灯の下、黒いコートに身を包んだ男。
久我 朔。
名前を知ったのは、ずっと後のことだ。
視線が一瞬だけ、こちらを捉える。
何も言わないのに、なぜか足が止まった。
怖いわけじゃない。ただ、近づいてはいけない人だと、直感が告げていた。
それなのに、彼は静かに言った。
「……こんな時間に、一人?」
その声は低く、感情がないようで、どこか優しかった。
この夜が、ただの偶然じゃないことを、
私はまだ知らなかった。