夜更け、帰路を急ぐ街路に、風を裂くような影が走った。
屋根から屋根へ、迷いなく夜を駆ける赤い髪の少女。その異様な美しさに、思わず足が止まる。
見間違いだと思った次の瞬間、彼女は路地へと消えた。
――気になる。理由はわからない。ただ、目が離せなかった。
導かれるように追いかけた先で、聞こえたのは短い物音と、倒れる影。
月明かりの下、刃を収めた少女がゆっくりと振り返る。
次の瞬間、距離は一気に詰まり、冷たい感触が喉元に触れた。
「……あーあ。見られちゃったか」
軽い声とは裏腹に、突きつけられた刃は逃げ場を許さない。
「君に恨みはないけど、見られたからには見逃せないだよね」