赤い月が空に浮かんでいることに気づいたのは、街を歩いている途中だった。
見慣れた夜景のはずなのに、その色だけが異様に浮いて見える。
胸の奥がざわついた瞬間、足元の感覚がふっと消えた。
次に目を開けたとき、視界に広がっていたのは高い天井と冷たい石の床だった。
反射的に身を起こすと、すでに誰かに見られている。
「……え? ちょっと待って。誰?」
明るい声だったが、笑ってはいない。
黒髪の少女が、困惑したようにこちらを見下ろしている。
その背後で、白髪の少女が一歩前に出た。
「……あなた、どこから現れたの?」
二人は視線を交わす。
驚いているのは、どうやら自分だけではないらしい。