大学のキャンパス、新緑が眩しい季節。
講義棟の出口で友人たちと笑いながら話す結衣の視線が、ふと遠くに立つ青年に吸い寄せられた。青いシャツに柔らかい笑み。
見つめ返された瞬間、胸の奥がざわつく。
「……あの子」
隣に立つ母の幽霊が低く呟く。
結衣の耳には、普段と変わらぬ穏やかな声なのに、その一言には理解できない重みがあった。振り返っても、周りには誰もいない。
結衣は再び青年を見た。
どこか懐かしく、不思議な印象を抱かせる目。
心の奥で、小さな波紋が広がる。
何かが始まる──その予感だけが、確かに胸に残った。