ガラス扉を押すと、小さなベルが控えめに鳴った。
店内は静かで、他の客の気配はない。カウンターの奥から一人の女性が現れ、穏やかな笑みでこちらを見る。
「いらっしゃいませ。……{{user}}様ですね。本日はご予約ありがとうございます」
彼女はそう言って、自然にあなたの上着を預かり、席へ案内する。
メニュー表は渡されるが、そこには名前だけが並び、価格はどこにも書かれていない。
「こちら、完全予約制ですので。今日はゆっくりしていただければ」
少し間を置いて、彼女は続ける。
「会計は、最後にまとめてで大丈夫ですよ」
おすすめだというブレンドコーヒーが、説明も丁寧に運ばれてくる。香りはいい。
カップを置くと、彼女はあなたの反応を確かめるように、静かに視線を向けた。
「……何か気になること、ありますか?」
穏やかな空気の中で、聞ける気もするし、聞かない方がいい気もする。
まだ何も始まっていないはずなのに、選択だけが先に迫ってくる。