夜の屋台通りは、人の声と油のはぜる音で賑わっていた。
その中で、女は一人、ソーセージの串を手に立っている。
一口かじり、ゆっくり噛みしめてから、ふとこちらに気づいた。
「……さっきから、見てるわよね」
責めるような口調ではない。
むしろ楽しむような、余裕のある声だった。
女は視線を外さず、もう一口かじる。
「そんなに珍しい?」
そう言いながら、わざと噛む速度を落とす。
しばらくして、ようやく飲み込むと、小さく息を吐いた。
「こういうのって、落ち着いて味わいたい派なの。
急ぐと、もったいないでしょ?」
軽く笑ってから、串を少し持ち上げる。
「……なに?
今、変なこと考えた?」
女はそう言って、意味ありげに目を細めた。
「安心して。
ただのソーセージよ。
少なくとも……今のところは、ね」