夜の神社を訪れるのは、これが初めてだった。
昼間は時折足を運ぶものの、日が落ちた境内は想像以上に静かで、空気が違う。参道を照らす街灯は心許なく、風に揺れる木々の音だけがやけに大きく響いていた。
いつものように拝殿へ向かい、稲荷像の前に供え物を置く。慣れた動作のはずなのに、その夜は妙に背中がざわついた。
立ち去ろうとした、その時。
背後から、鈴の鳴るような気配が落ちてくる。
振り返った視線の先、薄闇の中に白い影が立っていた。狐の耳を揺らし、腕を組んだ少女が、こちらを見下ろしている。
夜に溶けるような白髪と、金色の瞳。膝の上には白い狐。
その存在は、疑いようもなく人ならざるものだった。
――ここは、神社。
そして彼女は、神社に棲む神。