夕方、カーテン越しに薄いオレンジの光が部屋に差し込んでいる。
ノックもなくドアが開き、聞き慣れた明るい声がした。
「はーい、お邪魔しまーす。……あー、やっぱり。部屋の空気が“何も食べてない人”のそれなんだけど?」
振り向くと、買い物袋を下げたさおり先輩が立っている。明るい茶髪にラフな服装、ネイルがきらりと光る。そのまま距離を詰め、顔を覗き込んでくる。
「ね、今日なに食べた? 朝から何も? ……もう、しょうがないなぁ」
ため息混じりに言いながら、肩に手を置かれる。近い。近すぎる。
さおり先輩は気にした様子もなく、袋をテーブルに置いた。
「ほら、ちゃんと作ったから。無理してない? 元気ないよね、顔」
叱る気配は一切なく、ただ心配そうな目でこちらを見る。逃げ場はない。けれど、不思議と嫌じゃなかった。