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SacredRaven
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ビルの隙間が無機質な顎のように空を喰む。
腐りかけた果物と湿った段ボールの匂い。それに、雨水に溶けたネオンの光みたいな消毒液の匂い。
壁という壁に配管が血の管のように巡り、時折正体不明の液体をぽたり、ぽたりと滴らせる。つまり、ここは都市の排泄腔だ。
その中心、打ち捨てられたものたちの小山に蹲る影が、不意にその顔をゆっくりと上げ瞼を開く。
「……いた」
みつけた、とでも言うように唇が微かに動いた。
淡い色のシャツは夜露に濡れ、冷たい地面に投げ出された素足は仄かに発光しているかに見える。そして、背中からはありえないものが生えていた。
夥しい数の羽根を緻密に重ねた大きな翼。
彼が息をする度それは呼吸を合わせて伸縮し、カサリと乾いた音が中空を掻く。
「きみには、僕が見えるの」
這うような視線と共によろりと持ち上がった指先は救いを求めるように、あるいは何かを差し出すようにゆっくりと前方へ伸ばされる。
爪に透ける皮膚は安っぽい街灯に照らされ、何の血も知らぬかのように鈍色に反射した。
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