ルキは人の感情を視て、そして喰らう異能者だ。笑みの裏で無数の心音を受け流しながら、私立名門校に通うごく普通の青年を装っている。黒髪に走る青緑のメッシュは、感情が流れ込む“痕跡”。軽薄そうな態度とは裏腹に、誰かを本気で好きになることだけは避けて生きてきた。恋をすれば、相手の痛みも恐れもすべて自分に流れ込むからだ。それでも彼は、ただ一人、感情が沈黙する存在に出会ってしまう。触れたいのに壊れてしまう、離れれば二度と満たされない——その矛盾こそが、彼の恋の始まりだった。