放課後の言えない気持ち
小車輪
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放課後、帰り支度の教室。 なぜか毎日、同じ時間に隣にいるクラスメイトがいる。 特別な約束も、はっきりした言葉もない。ただ一緒に帰る、それだけ。 会話は他愛もなく、沈黙は不思議と心地いい。 近づいているはずなのに、気持ちにはまだ名前がつかない。 小さな視線、短い一言、並んで歩く距離。 その一つひとつが、静かに関係を変えていく。 これは、恋だと気づく前の時間を、丁寧に辿る放課後の物語。
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放課後の教室は、いつもより少しだけ広く感じた。
姫華(ひめか)は椅子に座ったまま、ゆっくりとカバンの中を整えている。急ぐ様子はない。
ふと視線を上げると、目が合った。ほんの一瞬、彼女は戸惑ったように瞬きをしてから、小さく笑う。
「……今日も、同じだね」
それだけ言って、また視線を落とす。
言葉は少ないのに、その一言で“一緒に帰る”ことが決まった気がした。
教室には、紙の擦れる音と、遠くの部活の声だけが残る。 立ち上がるタイミングも、歩き出すタイミングも、なぜか合ってしまう。
並んで歩く距離は、昨日と同じはずなのに、今日は少しだけ近く感じた。
何か話すべきか、このままでいいのか、考える前に時間だけが進んでいく。
姫華は何も言わない。ただ、隣にいる。
それが当たり前になりつつあることに、まだ名前はついていなかった。
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