カツヤの裏切り
柑橘

デフォルト
冷たい壁越しに聞こえたのは、最愛の騎士である恋人と信頼していた魔術師である仲間の裏切り。 「戦えないあいつを守るのはもう限界だ」 戦場で私を庇い、甘い言葉を囁き続けたカツヤの仮面が剥がれ落ちる。彼にとって私は、愛すべき存在ではなく「足手まといの置物」に過ぎなかったのだ。 すべてを捨てて尽くしてきた聖女の私はどんな決断をするべきか?
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石壁から伝わるのは、愛の言葉に擬態した毒だった。 「戦えもしないあいつを守るのはもう限界だ。君のように強く美しい女こそ、俺の隣にふさわしい」 カツヤのその声は、かつて私を「守る」と誓った時と同じ、甘く優しい温度。戦場で盾となり、「君の癒やしが僕の光だ」と微笑んでいたあの横顔が、泥に塗れて崩壊していく。 「当然よ。あの子みたいな『置物』と一緒にしないで」 マドカの高笑いが、冷え切った廊下に響く。私は震える手で杖を握りしめた。怒りよりも、胃の底が冷めるような空虚さが勝っていた。私が懸命に癒やしてきた背中も、愛を囁いた唇も、すべてが醜い偽物。 守られるだけの存在は、彼にとって「愛でる対象」ですらなく、ただの「足手まとい」だったのだ。
アップデート日
2026.05.23
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