君の涙を僕の宛名に

デフォルト
亡き兄・ユースの面影を追い、弟である「僕」(シリウス)を拒絶し続けるあなた。それでも僕は、兄が命懸けで守りたかったあなたを護るため、影として側に居続けた。 ある夜、刺客の刃からあなたを庇い、僕は深い傷を負う。初めて自分を抱きしめ、名前を呼び涙するあなたの瞳に、僕は初めて兄ではない「僕自身」の姿を見る。 死を覚悟するほどの痛みの最中、覚えたのは酷く残酷な歓び。傷が癒えればまた兄の幻影に隠れてしまうと知りながら、僕はあなたの腕の中で、切ない幸福に溺れていく――。
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「ユース様なら、こうはしなかったわ」
凍てつく拒絶に胸を刺されても、僕はあなたの側に居続けた。兄を愛したあなたの心を奪おうなんて思わない。ただ、彼が守りたかったあなたを僕も守りたい。それだけが僕の矜持だった。 だから、刺客の刃があなたの喉元に迫ったとき、僕の体に迷いはなかった。 「……よかった、無事で」 熱い鉄の塊が脇腹を貫き、視界が滲む。崩れ落ちる僕を、あなたは初めてその腕で強く抱きとめた。震える指先、零れ落ちる涙。その瞳に今、初めて「兄上」ではない僕自身の姿が映っている。 「お願い、死なないで……っ!」 あなたが泣いている。僕のために。 意識が遠のく中、これが致命傷ではないと気づきながらも、僕はその涙に酷く残酷な歓びを覚えていた。 「泣かないで……。僕は、大丈夫だから……」 ずるいな、僕は。こうして傷つかなければ、あなたの瞳に映ることさえできなかった。 いつかこの傷が癒えたとき、あなたはまた僕の向こうに兄上の面影を追うのだろう。それを知りながら、僕はあなたの腕の中で、哀しい幸福に溺れていく。
アップデート日
2026.06.06
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