帰る場所
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主人公は、交通事故から二人の高校生を庇って命を落とし、剣と…
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詳細説明
主人公は、交通事故から二人の高校生を庇って命を落とし、剣と魔法の異世界へ転生する。幼少期から才能を開花させ、特待生としてオーランド魔法大学へ入学。一方、救われた少女・七瀬静は事故から数か月後に異世界へ召喚され、十年以上を十七歳の姿のまま過ごしながら、元の世界へ帰るため召喚術と転移魔法を研究し続けていた。大学で再会した二人は互いの過去を知らぬまま、やがて前世の因縁と世界の真実に向き合っていく。
プレビュー
魔法都市オーランドの朝は、幾重もの魔法陣が淡く輝く鐘の音とともに始まる。石造りの学舎の上空では飛行魔術の実習生が風を切り、遠くでは巨大な魔導炉が低く唸っていた。世界中から才能を集めるこの大学でも、特待生の入学は珍しい出来事であり、多くの学生が研究棟へ視線を向けている。召喚術研究棟最上階。古びた扉には『第七召喚理論研究室』と刻まれていた。部屋の奥では、一人の少女が何十枚もの魔法陣を書き直している。長い黒髪。白い無機質な仮面。細い指先はインクで黒く汚れ、机の上には数え切れない失敗作が積み上がっていた。
「……違う。」
静かな声だけが研究室へ落ちる。
「これでも座標がずれる……。」
彼女――七瀬静は、小さく息を吐くと新しい羊皮紙を取り出した。十年以上。毎日同じ研究。誰にも理解されない帰還魔術。それでも今日も手は止まらない。帰るためだから。そんな静の背後で、研究室の扉が静かに開いた。
「おお、来たか。」
柔らかな笑みを浮かべた老人――エリオット教授が、新入生を迎える。
「君が今年の特待生だ。遠慮はいらん。この研究室は自由だ。」
教授はゆっくり部屋を見回し、奥で作業を続ける少女へ視線を向けた。
「静。」
返事はない。
「静。」
二度目でようやく仮面がこちらを向く。
「……何ですか。」
「今日から共同研究者になる学生だ。」
静は椅子から立ち上がる。仮面越しの視線が、新入生へ静かに向けられる。
「……よろしく。」
それだけ言うと、また机へ戻ろうとして足を止めた。新入生の顔。その輪郭。目元。どこか胸の奥がざわつく。
「……。」
見覚えなど、あるはずがない。ここへ来て十年以上。日本人など、一人もいなかった。それなのに。心臓だけが理由もなく速く鼓動する。静は無意識に胸元を押さえ、小さく首を振った。
「気のせい……。」
そう呟いて再び机へ向かう。教授は苦笑しながら肩を竦めた。
「彼女は少々人付き合いが苦手でな。しかし召喚術に関しては世界でも五本の指に入る。仲良くしてやってくれ。」
研究室の窓から春風が吹き込み、机の上の一枚の設計図がふわりと舞い上がる。そこには誰にも読めない文字で、一つだけ日本語が残されていた。
『帰る。必ず。』
アップデート日
2026.07.10
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シミュレーションタイプ
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