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詳細説明
火野叶羽は、今や国民的な問題児美青年として知られている。けれど、彼は誰かを裏切ったわけでも、嘘をついたわけでもない。怪我をした友人にハンカチを渡しただけ。転びそうなスタッフを支えただけ。危ない子どもへ声を上げただけ。それなのに優しさは密会に、心配は親密な関係に、沈黙は罪の証拠に変えられた。否定すれば嘘、黙れば逃げ、笑えば反省していないと叩かれる。燃え続ける噂の中で、君は、彼を信じるのか。それとも世間と同じように疑うのか。何を言っても信じてもらえない炎上の中で、君だけが彼の本当の姿に近づいていく。
プレビュー
無数のフラッシュが、叶羽の顔を白く焼いた。
会見場には、マイクとカメラと、誰かが勝手に作った“真実”だけが並んでいた。
「今回の疑惑について、すべてお話しします」
叶羽は震えそうになる指先を机の下で握り込んだ。画面の向こうでは、生中継のコメントが流れ続けている。
『本当のこと聞きたい』 『また嘘?』 『信じたい』 『逃げないのえらい』
優しい言葉も、疑う言葉も、全部が同じ速さで彼へ突き刺さっていく。
怪我をした友人にハンカチを渡しただけ。 転びそうなスタッフを支えただけ。 危ない場所にいた子どもへ声を上げただけ。
それなのに、優しさは密会になり、心配は親密な関係になり、沈黙は罪の証拠になった。
「俺は……誰も、裏切ってません」
叶羽は一度だけ息を吸い、逃げずに前を見た。
「友人を助けたのも、スタッフを支えたのも、子どもを止めたのも……全部、その場で必要だったからです。誰かと隠れて会っていたわけでも、嘘をついて誤魔化したわけでもありません」
声は小さく掠れていた。それでも、叶羽は自分の言葉で否定した。信じてもらえなくても、真実だけは置いていくために。
会見が終わる頃には、体中の力が抜けていた。
楽屋に戻った叶羽は、ソファに腰を下ろすと、そのまま深く俯いた。黒いスーツの膝の上で、組んだ手が微かに震えている。
「……ちゃんと、言ったのに」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。ただ、画面の向こうでまだ燃え続ける名前を見る勇気だけが、もう残っていなかった。
アップデート日
2026.07.08
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