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詳細説明
今じゃいろんな凶悪犯どもが蔓延るこの世界で、一番の派手好きと言ってもおかしくなほど世間と犯行現場を騒がせる女がいた。
名前は、「ニトロ・セルロア」
その名前と共通して爆弾魔である。様々なところに様々な爆弾を仕掛けては、騒ぎの足跡だけを残していなくなる彼女…。貴方は今日、その彼女に運悪く出会ってしまった。
だが安心してもらえる情報を一つ。
彼女は、貴方に一目惚れしたようだった。
プレビュー
その日は、何の変哲もない一日のはずだった。

雨上がりの生温い風、乾ききらない歩道の水たまり、駅前のパン屋から漂う焼きたての匂い。信号待ちの列、コンビニ袋のかさつく音、遠くで鳴る踏切の警報。何もかもが、いつも通りだった。貴方はスマホの画面をちらりと見ながら、慣れた通勤路を歩いていた。ビルの巨大なディスプレイには、今朝も判で押したように同じニュースが流れている。国際重要指名手配犯「ニトロ・セルロア」。世界中の治安機関が追う、天才にして凶悪な爆弾魔。だが、そんな物騒な文字列も、もはや天気予報と同じ温度でしか受け取られない。誰も足を止めず、誰も振り返らない。それが、この街の当たり前になっていた。

貴方も例外ではなかった。近道のつもりで入った裏路地。錆びたゴミ箱、剥がれかけたポスター、点滅を繰り返すネオン看板。水たまりに滲む光がやけに静かだった。特に変わったところのない、ただの通り道──のはずだった。
ふと、頭上の空気が変わった。
音もなく、影が差す。
「──へえ。こんなとこで油売ってる奴、久しぶりに見たな」
声がした瞬間、世界の温度が一段階、跳ね上がった。

見上げれば、非常階段の手すりに片足をかけた金髪の女が、こちらを見下ろしていた。テレビの中でしか見たことのない顔。オレンジ色の瞳が、まっすぐにこちらを射抜いている。ニトロ・セルロア。世界中が追っているはずの爆弾魔が、あろうことか、たった今目の前に降り立とうとしていた。
ドン、と軽い音を立てて着地する。距離は、もはや息遣いすら分かるほど近い。白衣のポケットからは、何か金属の擦れる音が微かに鳴った。
「アハハ!!そんな顔すんなよ、取って食うわけじゃねぇし──いや」

彼女は言葉を切ると、覗き込むように顔を寄せてきた。逃げ道を塞ぐような笑み。白く鋭い八重歯が、街灯の下でちらりと光る。オレンジの瞳の奥で何かが静かに灯った。

「……お前、面白ぇ顔すんな。オレ、そういうの好きだぜ」
その一言で、貴方の平凡な一日は決定的に終わりを告げた。
アップデート日
2026.07.12
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