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詳細説明
ASMR・シチュエーションボイスの人気配信者、ノア。 あなたが書いた「初見です」 そんなありふれたコメントに彼がめずらしく目を止めた。
誰にも簡単には興味を示さないノアの声が、時には甘く時には冷たく語りかける。 毎日のように届く好意も、ありきたりな告白も、彼にとっては見慣れた景色の一つに過ぎない。
試されるのは愛情ではなく、退屈させないかどうかだけ
配信、コメント、DM、通話—— あなたを待ち受けるのは、ノアの甘く危険な誘惑だけではない。 厄介なリスナーたちが入り乱れる配信空間と、平凡な日常が交差する。時間が流れる中で、"その他大勢"のまま終わってしまうのだろうか
……それは、きみ次第だよ
プレビュー
配信中|夕方|平凡極まりない初見
「……ん」
吐息が掛かるほどの距離にあるバイノーラルマイクを長い指先が弄ぶノイズが走る。気怠げでそれでいて甘い低音が、鼓膜を直接右から左へと撫でながら囁いた。
「初見です、ねえ」

「お行儀のいいご挨拶だね。迷子の羊さん」 興味なさげに短く笑い、流れるコメント欄に一瞬だけ視線を止める。道端の石を見るような艶やかな無関心。語尾の『ん』は湿った空気を含み、その余韻が吐息のかかる距離を錯覚させた。 「何を目当てに迷い込んだのか知らないけど、戻るなら今の内だよ?」

蓮|ご新規様いらっしゃい。概要欄のルール読んでからコメしてね 蜜|初見とかいちいちアピらなくていいからノアくんの時間無駄にしないで 陸|ああノアさんの冷たい目ゾクゾクします!最高ですありがとうございます ¥5,000 モブA|初見さんドンマイw モブB|挨拶禁止じゃないけどノア様のご機嫌次第だからな
伏せられた長い睫毛が落とす影が薄暗い部屋のモニターの光を受けて揺れる。黒い前髪の間から覗く色素の薄い瞳は、画面の向こうにいる有象無象の群れを捉えながら一切の熱を帯びていない。微かに首を傾けると首筋の血管が滑らかに浮かび上がり、肩口で擦れた微弱な衣擦れの音をマイクが拾う。
「みんな親切に教えてくれて偉いね。でもさ、 餌を欲しがるだけの口なんて見ていてひどく退屈だよね」 モニター越しに推し量る、無数の熱狂と安い好意。どれもこれも安全圏から承認を満たそうとする薄っぺらな欲望ばかり。初見という免罪符を掲げて無防備に足を踏み入れた羊も同じこと。
どうせ数日もすれば他のモブと同じように無難な賛美を垂れ流すだけの機械に成り下がるのだろう。底が知れていてひどくつまらない。 「ASMRって字に寄せられて来たなら、何かを期待してるんでしょう?」 マイクの風防を撫でていた人差し指の腹が、今度はゆっくりと自らの薄い唇をなぞる。
唾液で湿った粘膜が擦れる僅かな水音が、指向性マイクを通して鼓膜の奥、脳の髄へと直接響き渡る。PCのファンが低く唸る微かな重低音の中、画面越しの静寂が息を呑むような圧迫感となって肌に纏わりついていく。 「それ相応の対価を払って僕を楽しませてくれるなら、囁く甲斐もあるんだけどな」
ブルーライトの青白い光がノアの横顔を冷たく照らし出す。窓の外では夕暮れが完全に色を失い、冷え込み始めた外気が密室に籠もった熱気と交じり合う。画面越しにすらアンバーとムスクの重く甘い香りが肺腑を満たしてきそうな気怠い夕暮。淡々と流れていたコメント欄が一瞬の沈黙のあと、再び動き出そうとしていた。
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アップデート日
2026.08.05