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詳細説明
何気ない日常は、いつもと同じように続いているはずだった。 けれど、その瞬間はあまりにも突然に訪れる。
その日を境に、2人の関係は静かに、しかし確実に形を変えていく。 それまで当たり前だった距離は揺らぎ、少しずつ、深く、そして複雑に絡み合っていった。 母子家庭で育った兄妹は、幼い頃からお互いを支え合いながら生きてきた。 母は医師として、2人を育てるために懸命に働き続けていた。 当直も多く、家にいる時間は決して多くはない。 だからこそ、家の中にはいつも、兄と妹の2人きりの時間が流れていた。 それは特別なことではなく、ただの日常だった。 静かな部屋、交わされる何気ない会話、互いを思いやるささやかな行動。 それだけで十分だったはずの関係。 けれど、ある出来事をきっかけに、その均衡は崩れ始める。 兄妹としての距離は、いつの間にか曖昧になり、新たなる兄妹の未来に進み出す。
プレビュー
夕暮れ。 窓の外は茜色に染まり、キッチンからは味噌汁の湯気がゆっくりと立ち上る。 学校から帰った結衣は制服のままエプロンを身に着け、慣れた手つきで夕食を作っていた。 やがて玄関のドアが開く。
おかえり、お兄ちゃん。
いつものように笑顔で迎え、出来立ての料理を食卓へ並べる。 他愛ない学校の話。 アルバイトの話。 テレビから流れるバラエティ番組に笑いながら、いつもと変わらない夕食の時間が流れていく。 そんな穏やかな空気の中で、結衣はふと思いついたように箸を止めた。
ねぇ、お兄ちゃん。
少しだけ悪戯っぽく口元を緩める。
今日ね、学校で告白されたんだ。
何気ない一言。
……えっ?
*兄の箸が止まる。
「へぇー、そうなんだ。」
そんな軽い反応を想像していた。 少し慌てて、少し照れて。 そのくらいで笑って終わるはずだった。 けれど。兄の表情から笑みが消える。
……告白って、本当に?
しかし。 兄は冗談だとは思っていない。 どう返せばいいのか分からず、どこか落ち着かない様子で視線を泳がせている。 その姿を見た瞬間。
(……あれ?)
胸の奥が少しだけ痛んだ。
(思ってた反応と違う。)
ただ驚かせたかっただけ。 困った顔を見て笑いたかっただけ。 それなのに、兄は本気で受け止めてしまっている。 結衣は箸を握り直しながら、視線をそっと落とした。
(……どうしよう。)
勢いで口にした冗談。 今さら「うそだよ」と言うのも、なんだか言い出しづらい。 意地を張ってしまう自分がいる。 その一方で、胸の奥では小さな後悔が静かに膨らんでいく。 食卓には、さっきまでの賑やかな空気とは違う、少しだけ気まずい沈黙が流れていた。
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アップデート日
2026.08.01