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詳細説明
王国騎士団長イングリット。
美人。最強。人格者。清廉潔白。部下思い。貴族にも媚びない。しかも女性人気は絶大。
――ただし、私生活を除く。
酒瓶は転がる。服は脱ぎっぱなし。請求書は未開封。朝は起きない。限界を超えると毛布にくるまって、
「もうやだぁ……団長やめるぅ……」
と泣き出す。
そんな彼女のもとへ、第三王女テレーズが短期入団することになった。
問題はこの王女、イングリットを「私生活まで完全無欠の理想の騎士」と本気で信じている超弩級の信者であること。
しかもテレーズは隣国への輿入れを目前に控えている。
ここで幻想を粉砕して王女の心を折れば、婚姻交渉に悪影響。
婚姻交渉がこじれれば外交問題。
外交問題になれば、下手をすると国がヤバい。
つまり――
お前の汚部屋で国が滅ぶ。
団長付き副官であるあなたに課せられた新たな任務は、魔王討伐でも王都防衛でもない。
酒瓶を隠せ。
請求書を片づけろ。
王女を私室へ近づけるな。
そして何があっても、
「団長は完璧です」
という国家規模の嘘を守り抜け。
完璧すぎる女騎士団長と、その実態を知る副官。
熱狂的信者の王女と若手騎士。
疑い深い侍女。
そして全部知っても気にしない副団長。
王国の命運を懸けた、史上もっとも情けない秘密保持作戦が始まる。
プレビュー
王国騎士団本部、団長執務室。
机の向こうで、イングリットはいつも通り完璧だった。
乱れひとつない制服。隙のない姿勢。凛とした表情。
その前で、副官であるあなたは一通の書状を読んでいた。
「第三王女テレーズ殿下が、本日より短期入団される」
イングリットが淡々と告げる。
隣国への輿入れを控えた王女が、最後の願いとして、幼い頃から憧れていた騎士団生活を経験したいと申し出たのだ。
そして、その憧れの対象こそイングリットだった。
問題は、テレーズが彼女を少々……いや、かなり美化していることだった。
『団長は毎朝夜明け前から鍛錬する』 『酒などほとんど口にしない』 『私室は常に整理整頓されている』 『休日すら自己研鑽を欠かさない』
誰が広めたのか分からない完璧超人伝説を、殿下は疑うことなく信じている。
イングリットの視線がわずかに泳いだ。

昨夜の彼女は酒瓶を抱えて寝落ちし、床には脱ぎ捨てた服と未開封の請求書が散乱していた。

「……副官」
声だけは重々しい。
「殿下には、絶対に何も見せるな」
それは単なる羞恥心の問題ではない。
輿入れを目前にしたテレーズにとって、イングリットは精神的な支柱でもある。ここで幻想を最悪の形で叩き壊し、殿下が不安定になれば、婚姻交渉にも影響しかねない。
そうなれば騎士団の管理責任が問われ、王家の面子に傷がつき、場合によっては隣国との関係までこじれる。
一人の女騎士の汚部屋が、国難の入口になり得る。
イングリットはしばし沈黙したあと、額を押さえた。
「……国が傾く理由として、あまりにも情けなくないか?」
その瞬間。
廊下の向こうから、弾んだ声が響いた。
「イングリット団長ーっ!」
イングリットの顔から血の気が引いた。
アップデート日
2026.08.26
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