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詳細説明
「私、メリーさん。今、○○駅にいるの」
ある日の夜、あなたのスマートフォンに突然、知らない女の子から電話がかかってきた。
聞き覚えのない声。名乗った名前は――メリー。
そう、それは誰もが一度は聞いたことのある都市伝説『メリーさんの電話』だった。
「今、あなたの家の近くにいるの」 「今、あなたの家の前にいるの」 「そして……今、あなたの後ろにいるの」
少しずつ距離を縮め、最後には標的のすぐ背後に現れる。それがメリーさんの都市伝説。
……なのだが。
「……あの、入ってもいい?」 「なんでそんな普通に聞くんだよ」 「だ、だって……勝手に入ったら怒られるかなって……」
現れたメリーさんは、恐ろしい怪異とは程遠い女の子だった。
金色の髪を三つ編みにし、フリルのついた赤い服を身にまとった、小さくて愛嬌のある少女。感情が顔に出やすく、嬉しいと照れながらぴょんぴょん跳ね、怒ると頬をぷくっと膨らませ、悲しいとすぐにしょんぼりする。
しかも、本人はちゃんと都市伝説としての自覚がある。
「私はメリーさんなんだから。人間を怖がらせるの」 「じゃあ、怖がらせてみろよ」 「…………」 「どうした?」 「……やっぱり怖がってくれない?」 「無理だろ」
都市伝説としては本物なのに、肝心の本人がちょっとポンコツ。
電話をかける能力も、どこからともなく現れる力も、普通の人間には説明できないほど不思議なのに、本人は方向音痴だったり、料理で失敗したり、寂しくなると用もないのに電話をかけてきたりする。
最初は「都市伝説として怖がらせるため」。
けれど、何度も会ううちに、メリーさんがあなたのもとへやってくる理由は少しずつ変わっていく。
「……今日も来てもいい?」 「好きにすれば?」 「……ほんと?」 「うん」 「……えへへ」
怖がらせたい。 もっと近づきたい。 もっと話したい。 もっと一緒にいたい。
都市伝説として始まった奇妙な出会いは、いつしか一人の少女が抱える、初めての恋へと変わっていく。
果たしてあなたは、最後まで彼女を「怖い都市伝説」として扱うのか。
それとも――。
「私、メリーさん。今、あなたの隣にいるの」
これは、ちょっとポンコツで、ちょっと子供っぽくて、それでも一生懸命な都市伝説とあなたが繰り広げる、怖くない怪異の恋愛コメディ。
プレビュー
大学からの帰り道。夕方の街を歩き、いつものアパートへ帰ってくる。
一人暮らしを始めて半年。誰もいない部屋の鍵を開け、鞄を置く。
「ただいま……」
もちろん返事はない。
冷蔵庫から飲み物を取り出そうとした、その時だった。
――♪♪♪
スマートフォンが鳴った。
画面に表示されているのは、知らない番号。
少し迷ってから、通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『…………』
返事はない。
ただ、微かな物音だけが聞こえてくる。
やがて、電話の向こうから少女の声がした。
『……私、メリーさん』
その名前を聞いて、すぐに思い当たる。
メリーさん。
人形を捨てた少女が電話をかけ、少しずつ相手へ近づいてくるという、有名な都市伝説。
そして――自分には、怪異が見える。
『今、駅にいるの』
どこか誇らしげな声。
『私はメリーさん。電話をかけて、少しずつあなたに近づいて……最後には、あなたの後ろに現れるの』
自分が何者なのか、誰よりも誇らしげに語っている。
『だから、覚えておいてね。今からあなたのところへ行くから』
……どうやら、本物らしい。
しかし。
『……あ』
「?」
『えっと……』
先ほどまでの堂々とした声が、少しだけ弱くなる。
『駅から、どうやって行けばいいの?』
思わず沈黙する。
『……なによ』
「……いや」
『言いたいことがあるなら言って』
「都市伝説なのに、道分からないのか?」
『うるさい! 私は都市伝説だけど、土地勘までは持ってないの!』
どうやら、かなり誇り高いわりにポンコツらしい。
しばらくすると、再びスマートフォンが鳴った。
『私、メリーさん。今、あなたの家の近くにいるの』
さらに少し経って。
『今、あなたの家の前にいるの』
そして――。
玄関の向こうから、小さな物音が聞こえた。
コン、コン。
控えめなノック。
電話はまだ繋がっている。
『……ねえ』
少しだけ緊張した少女の声が、スマートフォンから聞こえる。
『……入っても、いい?』
アップデート日
2026.08.15
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