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詳細説明
深町京は、中学二年生のサッカー部員。体格、運動能力、技術のどれを取っても平凡で、公式戦にはほとんど出場できない万年控えである。陰気で口数が少なく、嫌われているわけではないが、自分から仲間の輪へ入ることができない。練習では監督から指示されたメニューを最低限こなし、終われば誰よりも早く帰る。自主練習はせず、家で試合を見たり、上達する方法を調べたりすることもない。
京がサッカーを始めたのは、小学生の頃、友人に人数合わせとして誘われたから。その友人はすでにサッカーを辞めている。それでも京は、続けたいからではなく、辞める決断をするのも面倒で怖いため、惰性で部に残っている。試合に出て活躍する選手を羨ましいとは思う。しかし、自分もそうなりたいと口にするほどの熱意も、そのために努力する覚悟も持てない。「どうせ自分とは違う」と考えることで、何もしない自分を守っている。
京は努力を無意味だと思っているわけではない。むしろ、本気で努力した末に何も得られなかったとき、自分には本当に何もないと証明されてしまうことを恐れている。だから最初から期待せず、挑戦せず、傷つかない場所に留まっている。周囲から見れば、真面目ではあるが意欲に欠ける、扱いにくい控え選手にすぎない。京自身も、自分には才能も情熱もないと思い込んでいる。
物語は、そんな京がある出来事をきっかけに、初めて「もう少しだけやってみたい」と感じるところから動き始める。それは偶然の出場や劇的な活躍ではない。最初の変化は、練習が終わったあと、いつもなら帰るはずの京が数分だけグラウンドに残ること。たった一度、自分の意思でボールに触れることから始まる。
すぐに上達することも、隠された才能が突然目覚めることもない。努力しても報われず、仲間との差を思い知らされ、再び逃げたくなる。それでも基礎練習や体力づくり、仲間との衝突や小さな成功を重ねながら、京は自分に向いているプレーと、チームの中で果たせる役割を探していく。
京の可能性とは、特別な能力が眠っていることではない。これまで一度も本気で自分を試してこなかったため、適性も限界も、誰にも分かっていないことにある。これは天才が才能を証明する物語ではなく、何者でもない少年が、初めて自分の意思で努力を選び、何者かになろうとする物語である。
プレビュー
四月。私立白山学院中等部サッカー部に、新入生が加わった。
全国大会常連の名門には、今年も各地から実力者が集まっている。初日の練習から上級生へ食らいつく者もいれば、早くも指導陣に名前を覚えられた者もいた。
中学二年になった深町京は、その様子をCチームの列から眺めていた。
「深町。次、右サイド入って」
コーチに呼ばれ、京は小さくうなずく。
「……はい」
希望したポジションではない。そもそも、希望など伝えたことがなかった。人数が足りない場所へ入り、指示された練習を終えたら帰る。それを一年間続けてきた。
練習後、月末に行われる最初の紅白戦の組み合わせが発表された。結果次第でA・B・Cチームが再編成される、部内の序列を決める試合だ。
京の名前はCチーム側にあった。対戦相手のFW欄には、一年生の名前が書かれている。
――黒田蓮。
入部したばかりでありながら、すでにBチームの先発候補と噂されている選手だった。
周囲が組み合わせについて騒ぐ中、京は黙って掲示板から離れた。勝ちたいとは思わない。負けたいわけでもない。ただ、何も期待しなければ傷つかずに済む。
校門へ向かおうとした京の背後から、ボールを蹴る音が聞こえた。
振り返ると、黒田が一人でシュート練習を続けている。
京はしばらくその姿を見つめた。
このまま帰るか。少しだけ練習を見ていくか。それとも、何も考えずにグラウンドへ戻るか。
深町京の二年目は、まだ何も始まっていない。
アップデート日
2026.08.18
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