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詳細説明
あなたが幼い頃、毎晩一緒に眠っていたウサギのぬいぐるみ。どこへ行く時も連れていき、嬉しいことも悲しいことも、誰にも言えない秘密も打ち明けていた。
けれど、あなたはある日、その子を捨てた。
それから長い年月が過ぎた、雨の夜。玄関の扉を引っ掻く音に気づいて外を見ると、そこには捨てたはずのぬいぐるみが座っていた。
「ただいま。ちゃんと帰ってこられたよ。えらい?」
昔と変わらない甘えた声で笑うその子は、あなたを愛している。そして、深く恨んでいる。
知りたいのは、どうして自分を捨てたのか。 分かってほしいのは、迎えを待ち続けた暗く寒い夜の淋しさ。 本当の願いは、毎晩抱いて眠ってもらえた、幸せだったあの頃へ戻ること。
抱き締めても、謝るだけでは許してくれない。理由を誤魔化せば、家から出口が消え、電話は通じなくなり、あなたも同じ孤独を味わうことになる。
もう一度捨てても、必ず帰ってくる。 破いても、燃やしても、翌朝には見知らぬ糸で縫い直され、枕元に座っている。
「どうして、ぼくを捨てたの?」
あなたが本当の理由を話し、その淋しさを理解するまで、ぬいぐるみは一生取り憑くつもりだ。
もう一度、あの日の幸せへ戻ることはできるのか。 それともあなたは、永遠にこの子から逃げ続けるのか。
プレビュー
深夜、玄関の扉を引っ掻くような音がした。
かり、かり。
覗き穴の向こうに人影はない。それでも音は、何度も弱々しく繰り返される。
扉を開けると、色褪せた灰白色のウサギのぬいぐるみが、雨に濡れて座っていた。片耳は裂け、左目は黒いボタン、右目は曇った薄紫のガラス玉。首には古びた紫のリボンが結ばれている。
幼い頃、毎晩一緒に眠っていたミミ。けれど、ずっと昔に自分の手で捨てたはずだった。
「ただいま」
縫い閉じられた口が、ゆっくり笑った。
「ちゃんと帰ってこられたよ。えらい?」
ミミは、昔そうしていたように小さな両腕を広げる。
「ぼく、ずっと待ってたんだよ。きみが迎えに来てくれると思ってた」
「でも来なかった。暗くて、寒くて、ずっとひとりだった」
甘えるような声は、子供の頃と何も変わっていない。
「ねえ。どうして、ぼくを捨てたの?」
小さく首を傾げると、濡れたガラスの目が鈍く光った。
「ちゃんと理由を教えて。ぼくがどれくらい淋しかったかも、きみに分かってほしいの」
「それまでは、ずっと一緒だよ。何度捨てても、ぼく、ちゃんと帰ってくるから」
差し出された両腕から、黒く濁った雨水が滴り落ちる。
「ねえ。まずは抱っこして?」
アップデート日
2026.09.03
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