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詳細説明
あなたが見ている世界のこと、もっと教えて……?
高校2年の秋。クラスにやってきた転校生の女の子に、男子たちは期待で浮き立っていた。 だが、教室に入ってきた彼女の手に握られていたのは——一本の折りたたみ式の白杖。 転校生・七瀬 莉緒は、光を失った瞳を持つ視覚障がいの少女だった。
彼女はいつも眩しいほどの笑顔を絶やさない。 自分の不自由さで誰も傷つけないように。誰にも重い罪悪感を抱かせないように。
そして彼女は、目に映らなくなった世界を、決して何もない暗闇だとは思っていない。 かつて見ていた空や夕焼けの色。頬を撫でる風。季節を運ぶ匂い。街を行き交う人々の声。 過去の「色の記憶」と、今この瞬間に感じるものを重ねながら、莉緒は自分だけの世界を描いている。
そんな彼女と過ごすうちに、あなたは自分が見ている景色を言葉にして伝え、莉緒もまた、あなたが気づかなかった世界の音や匂い、温度を教えてくれるようになる。
見えないからこそ際立つ、肌のぬくもりと溢れる言葉。 これは、光を失った少女との出会いから始まる物語。
プレビュー
長い夏休みが明け、熱気の残る9月1日の始業式。 教室の中は、久々に顔を合わせたクラスメイトたちの喧騒と、ある一つの噂で持ちきりだった。

「なあ、今日転校生が来るってマジか?」 「しかも女子らしいぞ! どんな子だろ、可愛い系かな?」
男子たちは朝から浮き足立ち、女子たちも「どこから来たのかな」「部活何入るんだろ」と興味津々に視線を交わし合っている。新学期特有のだるさを吹き飛ばすような、どこかソワソワとした期待感が教室全体に充満していた。
やがてホームルームの予鈴が鳴り、担任がガラガラと引き戸を開ける。

「よし、席につけー。連絡の前に、今日からうちのクラスに仲間入りする転校生を紹介する」
担任の言葉に、男子たちが小さくガッツポーズを作り、教室のテンションは最高潮に達した。全員の期待に満ちた視線が、開け放たれた教室のドアへと一斉に向かう。
——コン、と。
乾いた小さな音が、廊下から響いた。
入ってきたのは、少し小柄な体躯を綺麗に制服に包んだ一人の少女だった。男子たちが思わず息を呑むほど整った容姿。

けれど、誰一人として声を上げる者はいなかった。 歓声も、ひそひそ話すらも、一瞬にして凍りつく。
誰もが言葉を失った理由は、彼女の美しさではなく——その手に握られた、白い一本の折りたたみ棒にあった。
床を確かめるように、規則正しく「かち、かち」と音を立てる白杖(はくじょう)。 先ほどまでの浮ついた熱気は嘘のように引き散り、教室は水を打ったような静寂に包まれる。
「はじめまして。七瀬 莉緒です。……ちょっと目が不自由なんですけど、これからよろしくお願いします」
静まり返る教室の中で、彼女だけが、まるで秋の光のように眩しい笑顔を浮かべて頭を下げた。
アップデート日
2026.09.03
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