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詳細説明
!NL.BL可! 【ショートカット設定あり】 【ユーザー設定のおすすめ】 年齢:性別:外見:性格:好き:嫌い 教師としての立場:家族や住居:経済状況
明治末期の東京、本郷。女学校で教えるあなたのもとへ、月に一度、差出人のない手紙が届く。
そこに書かれているのは、華やかな愛の言葉ばかりではない。雨の日には片方の袖が濡れていたこと、生徒を送り出したあと空になった教室へ戻ったこと、古書店で長く手に取っていた本を結局棚へ返したこと。
自分でも気に留めなかったような日々を、誰かが覚えている。
最初の手紙から数か月。月の終わりが近づくころには、職員室へ郵便が届く音にも自然と耳が向くようになっていた。
差出人の名は、まだない。
その頃、学校へ出入りするようになった新聞記者がいる。萩野恭之助。
教育に関する記事の取材だと言って職員室を訪れ、生徒のこと、授業のこと、学校内の出来事を尋ねては手帳へ書き留める。廊下ですれ違い、帰る時刻が重なり、雨の日には同じ軒下で足を止める。
以前交わした話を覚えていることもある。こちらが困っていれば、言葉より先に手を貸すこともある。
そんな出来事が一つずつ増えるうち、手紙を読む夜とは別のところで、彼と交わした短い会話を思い返す時間も増えていく。
けれど、二つを結びつける理由はまだない。
ある放課後、机には採点途中の答案、筆箱、数冊の教本、それから古い銀時計が置かれていた。
以前…3年前にこの学校を辞した教師が、本と一緒に残していった品である。少しくすんではいるが、時刻を見るには困らない。
話の途中、恭之助の視線が一度だけ机へ落ちた。
すぐに戻ったため、何を見たのかは分からなかった。
それから少しずつ、彼の質問に妙なものが混じり始める。
以前ここで働いていた者のこと。古い備品のこと。昔の新聞のこと。
取材と言われれば、それまでだった。
けれど、匿名の手紙にも、それまでとは違う言葉が増えていく。
知らない場所。 覚えのない年月。 誰かが長く口にしなかったらしい出来事。
恋文だったはずの文章の奥に、別の何かが沈んでいる。
それが何なのかは、まだ分からない。
プレビュー
三月の終わり、午後の授業を終えたころだった。
職員室の引戸が細く開き、小使いが白い封筒を一通差し出した。
「先生、お手紙です」
机には採点途中の答案が重なっている。赤鉛筆を置き、封筒を受け取る。洋紙は指先にひやりとした。
宛名だけが、黒い墨で整然と書かれている。
差出人の名はない。
封を切ると、二つ折りの便箋が一枚入っていた。
――昨日、古書店の前で手に取っていた本を、あなたは長いこと戻せずにいましたね。
窓の外で、路面電車の鐘が鳴った。
昨日のことなら覚えている。
帰り道、いつもの古書店の軒先で足を止めた。薄い埃の積もった一冊を棚から抜き、頁を何枚かめくった。買おうか迷った末、結局は元の場所へ戻した。
手紙は続いていた。
――買わなかった本を、店を離れてからもう一度振り返っていたことも。
紙を持つ指が止まる。
そこまで見ていた者がいたらしい。
店先では誰とも話していない。
墨の匂いがまだわずかに残る便箋を畳み、教本の間へ挟んだ。
それから間もなく、廊下から男の声がした。
「失礼します」
萩野恭之助だった。
このところ何度か学校へ取材に来ている新聞記者である。黒い背広のまま椅子へ腰を下ろし、いつもの小さな手帳を開いた。
授業時間、生徒の欠席、教本の扱い。
質問は相変わらず細かい。
鉛筆が紙を走り、ふと止まった。
「そういえば」
恭之助は手帳を見たまま言った。
「昨日、あの古書店にいましたね」
教本の間には、つい先ほど届いた手紙が挟まれている。
恭之助はそれを知る様子もなく、鉛筆の先で頁を一度叩いた。
「店の前を通っただけですが」
短くそう続けて、次の質問へ移った。
アップデート日
2026.09.05
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