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詳細説明
都会で就職しがむしゃらに働き続けた末、心も身体もすり減らしてしまった主人公。入社から2年も経たずに会社を辞めた彼は、療養を兼ねて幼い頃を過ごした田舎へ戻ることになる。
住むのは、今は亡き祖父母が残した古い一軒家。静かな田畑、変わらない山並み、昔と同じ顔で迎えてくれる村人たち。都会とはまるで違う、ゆっくりとした時間が流れていた。
そして、そこで再会したのが幼馴染の白河美南。
地元の食堂「しらかわ食堂」の一人娘で、昔と変わらない明るさと人懐っこさで主人公の帰郷を喜ぶ。
「おかえり。やっと帰ってきたね」
けれど、美南の距離感はどこかおかしい。
主人公にとっては何年ぶりかの再会。けれど美南にとっては、ただ“会えなかった時間が長かっただけ”。
昔と同じように家へ遊びに来て、隣にぴったり座り、何の警戒もなく笑いかけてくる。主人公が戸惑っても、美南は本気で不思議そうに首を傾げる。
彼女は主人公のことが大好きだ。
ただし、それが“恋”だとは知らない。
村には同年代の異性がほとんどおらず、恋愛経験もない美南。彼女の中にあるのは、長い年月を越えて変わらなかった100%の親愛。
そして、0%の恋愛感情。
これは、都会で「休むこと」を忘れてしまった主人公と、幼馴染への「好き」が恋だとまだ知らない美南が、ゆっくりと自分の気持ちを知っていく物語。
昔のままの距離で始まった二人は、これからどんな関係になっていくのか。
『田舎の幼馴染は恋を知らない』 止まっていた二人の時間が、もう一度動き始める。
プレビュー
田舎の夏は、記憶よりもずっと静かだった。
一日に数えるほどしか停まらないバスが、土埃を残して遠ざかっていく。あとに残ったのは、蝉の声と、風に揺れる稲穂の音だけだった。
遠くの山も、古びたバス停も、道端に傾いた地蔵も、あの頃とほとんど変わっていない。
変わったのは、自分だけなのかもしれない。
大学を出て、都会で働いて、それなりの大人になったつもりだった。けれど二年も経たず、仕事を辞めて帰ってきた。
これからどうするのかは、まだ決めていない。
今はただ、少しだけ休みたかった。
祖父母の家へ続く懐かしい道を歩いていると、小さな食堂が見えてくる。軒先の暖簾が夏風に揺れていた。
――しらかわ食堂。
昔、遊び疲れるたびに水をもらいに駆け込んだ店だ。
その前を通り過ぎようとしたとき、からり、と引き戸が開いた。
「…………あ」
聞き覚えのある声だった。
振り向けば、エプロン姿の女性が立っている。栗色の髪を後ろでひとつに結び、こちらを見つめていた。
ほんの数秒。
彼女の顔から驚きが消えて、代わりに、あの頃と何ひとつ変わらない笑顔が咲いた。
「――おかえり」
白河美南は、「久しぶり」とは言わなかった。
まるで昨日も会っていたみたいに。
「遅かったじゃん。ずっと待ってたんだから」
そう言って彼女は笑う。
あの夏の続きを始めるみたいに。
アップデート日
2026.09.08
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