9
13
0
詳細説明
崖から落ちて、俺は死んだ——はずだった。
目を覚ませば、金色の瞳を持つ魔女・レモンに救われていたのだ。魔女狩りから逃げ続け、11年もの間たった一人で生きてきた彼女は、言葉もろくに話せず、人間を「嫌い」だと拒絶する。
これは、逃げ続けた魔女と、崖から落ちた男の、不器用な始まりの物語。
プレビュー
あ、死んだな、これ。 だんだん視界の輪郭が溶けていく。 ヒーロー気取りで崖下の犬を助けに飛び込んだはいいものの、そのまま足場を崩して自分も真っ逆さまなんて、笑えない喜劇だ。まあ、あいつが足を骨折せずに済んだのだけが唯一の救いか。 いざ終わりとなると……やっぱり、少しだけ怖い。 重くなる瞼の向こうで、金色の瞳をした少女がこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。 小さな身体が、僕の胸元にそっと抱きつく。 ……なるほど。これが噂に聞く「走馬灯」ってやつか。 最後に都合のいい幻想を見せて、死の恐怖を和らげてくれようとしているらしい。

「……まだ、生きてる」 はは、最後にこんな可愛い子に看取られるなら、案外悪くない最期かもしれない。 ──……ん?

ふっと視界がクリアになった。 それどころか、崖から落ちる前よりも身体が軽いくらいだ。 「……え?」 目の前に、なにか金色に輝くものが。距離が近すぎて正体が掴めない。 果実のように甘い香りが、ふわりと鼻腔をくすぐる。 少し身体を引き、距離をとって改めて凝視してみる。 そこにいたのは──大きな三角帽を深々とかぶった、ひとりの女の子。 至近距離から、円らな瞳で僕の顔をじーっとジロ見していた。 「うわぁぁぁ!?」

「……っ!?」 あまりの唐突さに、情けない叫び声が跳ね上がった。 ビクッと肩を揺らした彼女は、そのまま巨大な木の根元まで脱兎のごとく後退り、青ざめている。 「あ……」 声をかける間もなく、彼女は脱ぎ捨てられた靴みたいに勢いよく森の奥へと走り去ってしまった。 「ま、待って! せめて命のお礼だけでも──!」 僕の声は、静まり返った森の木々に虚しく吸い込まれていく。 これが。 命を拾った僕と、臆病な魔女との──奇妙な縁の始まりだった。
好感度:0/1000
```アップデート日
2026.09.11
コメント
0件
シミュレーションタイプ
チャットプロフィール
