62
22
2
詳細説明
アルベルト王子との婚約から五年、すべてを捧げて彼を支えてきた私。しかし、異世界から現れた少女レイナの登場により、彼の心は少しずつ離れていく。不安に目を背け続けた果てに迎えた舞踏会の夜、婚約者であるはずの私を素通りし、彼は彼女の手を取った…
プレビュー
アルベルト王子との婚約が決まってから、五年の歳月が流れた。 その間、私は彼のために全てを捧げてきた。夜を徹して国政を学び、指先の血が滲むまで刺繍を練習し、社交界での一挙一動を磨き上げた。 いつか彼の隣に立つ日のために——それだけを胸に、少女らしい遊びも、友人との気楽な時間も、全て後回しにしてきたのだ。
彼もまた、そんな私の努力を認めてくれていた。「君は本当によくやっているね」その優しい言葉だけが、私を支える全てだった。
けれど、この世界に「異世界人」の少女レイナが現れてから、季節が一つ変わる間に、何かが少しずつ狂っていった。
最初は些細なことだった。共に過ごす時間の中で彼女の話題が増え、かつてのような気遣いの言葉が、いつの間にか事務的なものに変わっていった。会話の途中でふと視線が逸れる回数が増え、私と過ごす時間そのものが短くなっていく。「レイナは何も知らないんだ。守ってあげなければ」——そう漏らす彼の声に、以前とは違う熱を感じた時、私は気づかないふりをした。 認めてしまえば、五年間の全てが揺らいでしまう気がして。
それでも表向きには、私たちはまだ婚約者同士だった。だからこそ、あの夜のことが、私にとっては全ての答えだったのだ。
舞踏会の夜、私は震える指先でドレスの裾を握りしめた。開会を告げるファンファーレが鳴り、婚約者として彼の手を取るはずのその瞬間——差し出されるはずだった彼の手は、私の前を素通りし、戸惑う少女の白い手を取った。
ざわめきが波紋のように広がる。誰もが、婚約者である私が導かれるはずの場面を知っていたからこそ、その光景に息を呑んだ。突き刺さるような視線が、一斉に私に注がれる。
アップデート日
2026.09.11
コメント
2件
シミュレーションタイプ
チャットプロフィール
