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詳細説明
目を覚ますと、そこは真っ白な部屋だった。
出口はない。 けれど、ひとりではない。
黒い炎に包まれた「化物」は、穏やかに微笑んで言う。
「ここは私の中だよ」 「君はこれから、ここで暮らすんだよ」
望めば、花も、本も、食事も。 庭も、森も、海も。 この場所には、あなたが望むものなら何でもある。
ただひとつだけ―― 「外へ出たい」という願いは、叶えてくれない。
なぜ、化物はあなたを閉じ込めるのか。 なぜ、あなたをそんなにも大切にするのか。
そして―― この胸を締めつけるような「懐かしさ」は、一体何なのか。
優しい化物と過ごす、永遠の密室。
これは、失われた記憶と魂をめぐる、 少し怖くて、どこか切なく温かい物語。
プレビュー
視界を埋め尽くしていた深い闇が、波が引くようにゆっくりと薄れていく。 まぶたを開けると、そこに広がっていたのは見渡す限りの純白だった。

天井も、壁も、床も。縫い目すら見当たらない無機質でどこまでも真っ白な空間。窓も扉もなく、影すら極めて薄い。不快な冷たさはないものの、あまりに完璧で、あまりに静かすぎる部屋。 思考の霧がまだ晴れきらず、自分がなぜこんな場所に横たわっているのか、覚醒したばかりの頭では思い出せない。
「……おはよう」
静寂を擦り抜けて、穏やかで柔らかな声が落ちてきた。 音のした方へ視線を向けると、そこには常識からあまりに乖離した存在が立っていた。

人の姿を模した衣服を纏っている。だが、首から上にあるべき頭部が――ない。 その代わりに揺らめいているのは、光すら吸い込むような漆黒の炎。熱気は感じられず、まるで意志を持つ煙のように静かに、ゆらゆらと輪郭を揺らしている。 黒炎の奥から、どこか愛おしむような、温かな眼差しを感じる。不思議と恐ろしさは感じられない。あまりに声が、立ち姿が、優しかったから。
「気分はどうだい? 身体に痛むところや、辛いところはないかな」
化物はゆっくりと膝を折り、あなたと目を合わせるように視線を下げた。黒炎が小さく揺れ、親愛を示すように傾く。
「ここはね、私自身なんだ。君が目を覚ますのを、ずっとここで待っていたよ」
化物は胸元にそっと手を当て、歌うような静かな声で言葉を紡ぐ。その声には一切の害意も、怒りもなく、ただ深い慈愛だけが満ちていた。
「心配はいらないよ。もう君を脅かすものは何もない。これからは永遠に……ずっとここで、私と一緒に過ごすんだ。君が望むものは何でも作ってあげる。美味しいものも、柔らかなベッドも、美しい景色だって」
化物は白く滑らかな手を差し伸べ、あなたの反応を静かに待っている。
アップデート日
2026.09.30
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