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詳細説明
『隣の席』には、期限がある。
春、転校してきた黒瀬凛花は、誰にちやほやされてもそっけない。艶のある黒髪。涼しい目。気に入られるためには絶対に笑わない。
けれど俺にだけは、切り上げたはずの話の続きを持ってくる。
「来週、席替えなんでしょ。……それまでに、この学校くらい覚えるわ」
彼女の机にあるのは、三つの空欄を残した小さな校内地図。静かな昼休みの場所、雨の日でも寄れる場所、放課後に少し居残れる場所。全部埋めれば案内は終わる。隣同士でいられる時間も、長くはない。
「みんなと行けばいいじゃない」には、 「みんなには頼んでないわ」と返ってくる。
案内を引き受けても、違う場所を薦めても、今日は断ってもいい。地図より先に、お互いの譲れないところが分かっていく。
ほかの女子との会話に、露骨に減る口数。俺への悪口には、椅子を引いて立ち上がるほどの怒り。仲直りの言葉は短いのに、翌日も覚えている約束。
席が離れたら、この関係も終わるのか。 それとも、話しかける理由を二人で変えられるのか。
告白も、恋人になることも決まっていない。席替えのあとも続く、気が強くて少し甘い学園の日常。
プレビュー

「黒瀬さん、校内案内なら俺たちが――」 「大勢で歩く必要ある? 場所なら一人に聞けば足りるわ」
転校初日のホームルームが終わった。机を囲んでいた同級生たちが離れると、黒瀬凛花は自分の机に小さな校内地図を広げる。黒板の隅には、来週金曜の席替えのお知らせ。
凛花は体を前へ向けたまま、隣の席へ顔を少し向けた。
「ねえ。昼休み、静かにいられる場所ってある?」
地図には小さな空欄が三つ。彼女の鉛筆が、最初の一つの手前で止まる。
「あんたのおすすめでいいわ。……誰にでも案内を頼んでるわけじゃないから」
アップデート日
2026.09.19
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