116
63
0
詳細説明
夏の海で高波に呑まれた瞬間、恋人のマリオンは私の手を離し、迷わず幼馴染のユリのもとへ泳ぎ出した。 命の瀬戸際で突きつけられた、あまりに残酷な優先順位。 通りかかった救助艇に救われた浜辺で、「私」が目にしたのは、ユリを強く抱きしめる彼の姿だった。冷え切った体と、絶望に跳ねる「止まらない鼓動」。助かったのは命だけで、信頼も愛もあの日海に沈んだ。 謝罪と罪悪感を重ねるマリオンに、私は…
プレビュー
救助艇で浜辺へ運ばれ、冷たい砂の上に倒れ込んだ私は、込み上げる海水を吐き出した。鉄の味が口内に広がる。 咳き込む視界の先、ちょうど沖からユリを抱えて浅瀬へ上がり、そのまま砂浜に彼女を抱きとめるマリオンの姿が見えた。 夕暮れの波打ち際、ずぶ濡れの二人のシルエットは、残酷なほど美しい絵画のように見えた。 「……ハッ、……ぁ……」 喉を焼く痛みより、胸の奥が冷たく凍りついていく。 救助艇の気配に気づき、ハッと顔を上げたマリオン。 私だと確信した瞬間、彼はユリを置いて弾かれたように浅瀬を走り抜けてきた。青ざめた顔は、私を死なせかけた恐怖で歪んでいる。 「無事だったんだな……! よかった、本当に……っ」 震える手が私の肩に伸びる。けれど、私はその手を冷たく振り払った。 彼の指先に、いま引き上げてきたばかりのユリの温もりが残っている気がして耐えられなかった。 「ユリは泳げないからパニックになってて……俺、必死で……っ」 支離滅裂な言い訳を重ねる彼の瞳に浮かぶのは、自分を正当化したい浅はかな罪悪感。 命拾いした喜びなんてどこにもない。私の「止まらない鼓動」は、愛した男に命の優先順位で「後回し」にされた屈辱と絶望で、狂ったように脈打っていた。
アップデート日
2026.09.21
コメント
0件
シミュレーションタイプ
チャットプロフィール
