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詳細説明
大陸最大の国家――アルヴェリア帝国。
長い繁栄を享受する帝国の首都で、士官学校の卒業式が行われようとしていた。 主人公、エレナ・ヴァルシュタイン、ルーカス・エーベルハルト。 三人は幼い頃に出会い、それから十年以上共に過ごしてきた。
主人公は、優秀でありながら目立つことを好まず、いつも二人を陰から支えてきた青年。 エレナは、地方の名門ヴァルシュタイン本家の血を引きながら、幼少期から帝都の分家で育った才媛。美貌、学業、武芸、指揮能力、そのすべてで同期を圧倒する士官学校屈指の逸材だった。 ルーカスは帝国有数の大商家エーベルハルト家の次男。誰とでも打ち解ける笑顔の裏で、人間の感情と利害を恐ろしいほど正確に見抜く青年だった。
性格も、才能も、生まれも違う。 それでも三人にとって、三人でいることだけは当たり前だった。 だが、卒業の日。 その当たり前が初めて崩れる。 エレナに、ヴァルシュタイン本家領への赴任命令が下ったのだ。 辺境を守る地方軍は、優秀な若い士官を必要としていた。 エレナには中央に残る道もあった。 主人公と共に軍人として歩むこともできた。 それでも彼女は本家へ戻ることを選ぶ。 自分を必要としている土地と人々がいる以上、恋人と一緒にいたいという理由だけで、その責任から逃げることはできなかった。 主人公は中央軍へ。 ルーカスも中央軍へ進み、商家育ちの知識を買われて兵站・情報系統へ配属される。 そしてエレナは、遠く離れた故郷へ。 三人は別れ際に約束する。 次の長期休暇には、また三人で集まろう。 それは彼らにとって、特別な約束ですらなかった。 十年以上そうしてきたように、これからも三人の関係は続いていく。 誰も疑っていなかった。
――その約束が果たされることはなかった。 数年後。 皇帝が急死する。 後継者を巡る中央政府の対立は軍部、貴族、地方領主を巻き込み、巨大帝国を内側から引き裂いていく。 各地方軍に服従命令が発せられる。 ヴァルシュタイン領にも武装解除と当主出頭の勅命が届く。 中央政府に従えば、自分が守ってきた兵士と領民が粛清される可能性がある。 反対すれば、帝国への反逆となる。 エレナは――地方に残る。 一方、中央軍に残った主人公には、 「反乱軍ヴァルシュタイン地方軍を鎮圧せよ」 という命令が下される。
プレビュー
帝都の鐘が鳴ったのは、まだ空が白み始める前だった。
一度、二度ではない。重く、長く、途切れることなく。
兵舎の窓を開けた主人公は、その音を聞いた瞬間に制服へ手を伸ばした。これは時刻を告げる鐘ではない。
廊下へ出ると、同じように飛び起きた士官や兵士たちが行き交っている。
「何があった?」
「分かりません。ただ、全将兵に待機命令が――」
答えを聞き終えるより早く、伝令が駆け込んできた。
「皇帝陛下が――崩御されました」
主人公の動きが止まった。
皇帝が死んだ。
その意味を理解するより先に、頭に浮かんだのは遠く北東にいる一人の女性だった。
「……エレナ」
数時間後、帝都は異様な静けさに包まれていた。
市民には外出を控えるよう布告が出され、城門には兵士が配置された。中央軍司令部では将校たちが絶え間なく行き交い、命令書が次々と各方面へ送り出されていく。
主人公も状況整理に追われた。
北部軍、沈黙。
西部二個師団、命令受領。
南部諸侯、態度不明。
そして――
ヴァルシュタイン地方軍、回答なし。
その文字を見つめていると、隣から声がした。
「嫌な感じだな」
ルーカスだった。
いつもの軽薄そうな笑みは浮かべている。だが、その琥珀色の瞳だけは笑っていない。
「考えすぎだ」
主人公は答えた。
「そうだといいけど」
その日の夕刻。
二人のもとへ第二報が届く。
中央政府はヴァルシュタイン地方軍に武装解除を要求。さらに当主レオンハルト・ヴァルシュタインへ帝都出頭を命じた。
主人公は命令書を二度読み返した。
「……武装解除?」
国境を守る四万を超える軍隊に武器を置けという。
それが何を意味するのか、士官である彼には分かりすぎるほど分かった。
そして深夜。
第三報。
ヴァルシュタイン家、武装解除命令を拒否。
司令部の空気が変わった。
誰かが「反乱」と呟いた。
主人公は窓の外を見る。
帝都には雨が降り始めていた。
エレナから最後に届いた手紙は三日前だった。
『こちらは変わりないわ。次の休暇について分かったら知らせて』
何度も読んだ、何でもない文章。
胸元にしまった手紙を制服越しに握る。
そのとき、廊下を走る伝令の声が響いた。
「北東方面で交戦!」
アップデート日
2026.10.01
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