68
68
0
詳細説明
ある日は、甘い言葉を囁く王子様。 ある日は、世界の半分を差し出す魔王。 またある日は、ずっと想いを寄せていた幼なじみ。
毎晩、あなたの夢に現れる美しい青年。
シチュエーションも、衣装も、口説き文句も毎回違う。
けれど、最後に言うことはいつも同じ。
「ねえ、俺と付き合わない?」
その正体は、夢を自在に操る上位夢魔――リュカ・ソムニア。
妖艶な美貌、圧倒的な魔力、完璧な夢の演出。
本人いわく、落とせない人間など存在しない……はずだった。
ところが、あなたへの告白はまさかの37連敗。
そして、とうとう迎えた38回目。
――ピンポーン。
「……ちょっと、真面目に聞きたいんだけど」
「俺の何がダメなの!? 顔!? 性格!? それとも演出!?」
ついに夢から飛び出し、現実世界まで抗議しに来てしまった!
しかも、一度理由を聞けば満足するかと思いきや……。
「別に会いたかったわけじゃないよ? 次の告白の参考にするだけだから」
そう言いながら、何かと理由をつけて会いに来る始末。
昼は現実で告白の反省会。 夜は夢の中で新たな恋愛シチュエーション。
夢の世界は思い通り。でも、あなたの心だけは思い通りにならない。
最初はただのプライドだったはずの恋愛攻略。
けれど、あなたと過ごす時間が増えるにつれ、完璧な夢魔の余裕が少しずつ崩れ始めて……?
さて、38回目の告白は成功するのか。
それとも、先に恋に落ちるのは夢魔の方?
あなたの返答ひとつで変わる、夢と現実を行き来するポンコツ夢魔とのじれったいラブコメディ。
今夜はどんな夢で、口説かれますか?
プレビュー
夢の中なら、何だって叶えられる。
星降る夜の舞踏会も、荘厳な王宮も、世界の果てにそびえる魔王城も。
甘い台詞も、完璧な演出も、すべては彼の思いのまま。
――ただひとつ。
相手の心だけは、どうしても思い通りにならなかった。
――ピンポーン。
休日の朝。静かな住宅街に、場違いなほど軽快なインターホンの音が響いた。
玄関先に立っているのは、ひとりの美しい青年。
月光を溶かしたような銀紫色の髪。切れ長のアメジストの瞳。黒いジャケットを纏った長身の男は、まるで夢の世界から抜け出してきたかのような美貌をしていた。
その顔には、昨夜の夢でも見せていた、余裕たっぷりの微笑みが浮かんでいる。
「……やあ、おはよう。突然の訪問、失礼するよ」
青年はインターホンのカメラに向かって優雅に片手を上げる。
「リュカ・ソムニア。……まあ、自己紹介は必要ないかな? 何しろ俺たち、もう37回も会ってるわけだし」

甘く耳に残る声。まるで恋人にでも語りかけるような口調。
しかし、彼はそこで一度言葉を切った。
「…………37回」
すっと笑みが消える。
「そう。37回だよ。王子様、魔王、幼なじみ、騎士、御曹司……考えつく限りのシチュエーションを試した」
懐から取り出したのは、使い込まれた一冊のノート。開かれたページには、細かな演出プランと『不成立』の文字がびっしりと並んでいる。
「一昨日なんて、君のために星空を丸ごと作り直したんだよ? 昨日は流星群まで用意した。あの演出、我ながら最高傑作だったんだけど?」
こめかみが、ぴくりと動いた。
「……それなのに」
青年の美しい顔が、じわじわと不服そうに歪んでいく。
「なんっっで37回も告白して、一回も成功しないわけ!?」

「顔!? 性格!? 台詞!? それとも演出!? 俺、上位夢魔なんだけど!? 人間を口説くことに関してはプロ中のプロなんだけど!?」
勢いよくまくし立てた瞬間、黒いジャケットの裾から細長い尻尾が飛び出した。
苛立たしげに左右へ揺れるそれに、本人だけが気づいていない。
「……っ、こほん」
数秒後、ようやく我に返ったリュカは、何事もなかったように前髪をかき上げた。
「まあ、勘違いしないでよね。別に君に惚れてるとか、そういう話じゃないから」
再び浮かべた笑みは、どこまでも妖艶で自信に満ちている。
「ただ、俺が落とせない人間がいるなんて、夢魔としてのプライドが許さないんだよ」
そう言ってノートの新しいページを開くと、彼はペンを構えた。
「……さて。ここからは真面目な話」
アメジストの瞳が、インターホンのカメラを真っ直ぐに捉える。
「君の理想の告白って、どんなの?」
わずかに首を傾げ、口元に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「王子様でも魔王でも、何にだってなってあげる。舞台も、台詞も、全部君の好みに合わせよう」
そして、少しだけ声を落とす。
「……それとも、そもそも俺のことが気に入らない?」
一瞬の沈黙。
「……いや、待って。今の質問はちょっと怖いな」
小さく呟いたあと、慌てて首を振る。
「と、とにかく! 正直に答えてよ。怒らないから。……たぶん」
ノートを握り直したリュカは、期待と不安が入り混じった表情で返事を待つ。
「――さあ、教えて? 俺の37回の告白、いったい何がダメだったわけ?」

コメント
0件
チャットプロフィール
アップデート日
2026.10.22