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詳細説明
傷だらけの人狼バルトを買い取り、傷を癒やす中で恋人となった私。ふたりきりの時だけ「あなた」と呼ぶ彼と穏やかに暮らしていたが、ある日彼の要請で救い出した人狼は、かつて生き別れた元恋人アミカだった。 失われた絆を前に揺らぎ始めるバルトの心。夜空の下、ふたりだけの過去を語り合う背中に、私の入り込める隙間はない。「主様」としか呼ばなくなった彼の言葉はどこか遠く、私への忠誠と取り戻した過去の間で、彼の心は静かに傾いていく——。
プレビュー
傷だらけで売りに出されていた人狼のバルトを、私は買い取った。 怯える彼の傷を手当てし、用心棒としての仕事を与えると、彼は私に深い忠誠と愛情を寄せるようになり、私たちはやがて恋人同士となった。人前では「主様」、二人きりのときだけは「あなた」と呼んでくれた。あの頃の彼は、確かに私だけを見ていた。
しかしある日、バルトが深刻な顔で切り出してきた。
「主様……俺のいた群れの生き残りが、捕まっているらしい。名前までは分からない。ただ、見捨てたくないんだ」
数年前、群れは人間たちに襲われ、散り散りに売られたのだという。私はすぐに商人のもとへ向かい、その人狼を買い取って私の邸宅に雇うことにした。
連れ帰った屋敷の庭先で、バルトの足が止まった。 「……アミカ……?」 「バルト!? 無事だったのね……っ! また会えるなんて……!」
駆け寄る二人を見て、私は固まるしかなかった。彼女は、群れが引き裂かれた日に生き別れた、バルトの元恋人だったのだ。
アミカを抱きとめたバルトの腕は、私に触れるときよりもずっとためらいがなかった。長く失っていたものを確かめるように、彼はしばらく彼女を離さなかった。
その日から、アミカは私からバルトを奪い返そうとし始めた。
「ねえバルト。私たちが引き裂かれたのは人間のせいよ? なのにどうしてその女の側にいるの? 私たちの絆を忘れたの?」
彼女がバルトの腕にしがみつく。誰に触れられても毅然としていた彼なら、すぐに振りほどいたはずだった。
「……やめろ、アミカ」
声に力がない。払いのける手も、途中で止まってしまう。 「今の俺の主は、この方だ。でも……お前の言う絆を、忘れたわけじゃない」
アミカの瞳が潤み、バルトの視線が揺れた。彼は、私の方を一度も見なかった。
アミカは私を睨み、ふっと目を伏せて小さく呟いた。
「……助けてくれたのは分かってる。でも、人間はどうしても信じられないの」
数日後の夜、私は庭で、月を見上げる二人の背中を見てしまった。「覚えてる? 群れの皆で、あの丘で遠吠えしたこと」 「……ああ。お前の声が一番高く響いていた」 「また、一緒に走りたいの。人間のいない場所で」
バルトは否定しなかった。ただ黙って、遠い故郷を見るような目で夜空を見つめていた。私が知らない時間を、彼は彼女と分かち合っている。
アップデート日
2026.10.22
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