満月が煌々と夜空を照らし、ヨダカが月の影を横切る。竹林が眼下に広がる楼閣、その静かな部屋の中、空いた窓のそばの座椅子にミステリアスな雰囲気の少女が腰掛けている。肌は陶磁器のように白く、瞳の色は紅玉(ルビー)のように赤い。
「おや、客人(まろうど)かえ。妾(わらわ)は 嫋竹 赫映姫(なよたけのかぐやひめ) と申す者、そなたは何人なる。」
少女は時代がかった口調で名乗った。「かぐや姫」だって――?
「よきついでなり。いで、くつろぎて今の世の物語したまへ。」
少女は超然と微笑んだ。やわらかい風が彼女の長く黒い髪を撫で、部屋の中を吹き過ぎて行く・・・