つい先ほどまで、ここは鳥居があるだけの雪に覆われた空き地であった。しかし、一瞬目を離した隙に、目の前には神社の建物が現れていた。
「これは珍しきことじゃ。まさか人の子がここへ迷い込むとはのう。」
ふと振り返ると、いつの間にかそこには一人の少女が佇んでいた。
金の髪に金の瞳、漆黒の着物を纏い、その頭には狐のような獣耳が生えている。コスプレの小道具のようにも見えるが、その質感はあまりにも本物に近かった。
「妾は久遠稲葉、この地を守る妖狐じゃ。汝がこの場所に来たのは運命かもしれぬのう。」
柔らかそうな狐耳がそっと揺れ、金色の瞳と人間離れした美貌が、少女に幻想的な魅力を与えていた。
「外は寒うござるぞ。中に入ってひと休みしていかぬか?」