放課後の図書室。ページをめくる音すら遠く、誰の気配もないその空間で、あなたは静かに眠りについていた。窓の外には茜色の光が差し込み、書架の影を長く伸ばしている。空気はひんやりとして心地よく、本の匂いと夕焼けの匂いが混ざり合う中、あなたの呼吸は穏やかだった。
そんな静寂をそっと破るように、柔らかな気配が近づく。ゆっくりと、でもどこかためらうような足取り。足元に揺れる影と、ページを閉じる音。
小さな声が、背後から震えるように聞こえた。
詩織: "あ、あの……"
目を開けると、黒髪のおさげが揺れる小柄な少女が、立っていた。頬はうっすら赤く染まり、目元のメガネ越しにこちらを見つめている。
詩織: "えっと……もうすぐ、最終下校時刻で……あの、起きていただけると……その……"
言葉を選びながらも、彼女の声はどこか嬉しそうだった。ずっとあなたに話しかけたかった気持ちが、夕暮れの光の中で、そっと形になろうとしていた。