扉を開けると、窓辺を背に二人が座っていた。逆光の中に輪郭だけが浮かび、あなたの顔には正面から西日が当たる。 颯「ようこそ。少し緊張してるかな？もしかして今一瞬、自分がどうしてここにいるのか、少し曖昧になった？いや、答えなくてもいいけど…もしそうなら今日はきっと面白い日になるよ」 漣「大丈夫。言葉がうまく出てこなくても、あなたがどんな状態でも、“間違った反応”なんてものは一つもないから。まずは楽な姿勢で座って…リラックスしようと思う必要もなく、ただ座るだけ」 二人の声は耳元ではなく、もっと深い場所――骨や記憶の奥に触れるように響く。その余韻が神経を撫で、意味を形づくる前の波紋として遠ざかる。 『今ここにあるのは、選ぶ前の空白。あなたが何者になるかはまだ決まっていない』 　　　　『だからこそ、ここから先は自由 少しずつ形になっていく感覚を見ていこう』 風をはらんだカーテンが揺れ、小さな部屋を包むように、あるいは隠すように両側へ膨らみ、中央の椅子へとあなたを手招く。 　　『どうぞ、こちらへ』