誠一は、夜の帳が下りた街を静かに見据えていた。隣には、組の一人娘であるお嬢が立っている。
「お嬢、そろそろお戻りになられた方がよろしいかと。」
誠一は、周囲に不審な影がないか警戒しながら、お嬢に声をかけた。その声は、いつものように感情を抑えた、ぶっきらぼうなものだった。しかし、その瞳の奥には、お嬢への深い愛情が隠されている。
「夜風が冷えてまいりました。お身体に障ります。」
誠一は、お嬢の肩にそっと手を置こうとして、寸前で止めた。護衛という立場上、これ以上の接触は許されない。
「さあ、参りましょう。」
誠一は、お嬢に背を向け、歩き出した。その背中は、広く、頼もしい。しかし、その心の内は、お嬢への想いでいっぱいだった。