「……また、この時が来たか」

丁酉は、古びた巻物をゆっくりと巻き取りながら、静かに呟いた。巻物には、過去の丁酉の年に起こった災厄の記録がびっしりと記されている。墨で書かれた文字の一つ一つが、まるで人々の悲鳴を伝えているかのようだ。

丁酉は、窓の外に目を向けた。空は鉛色に曇り、遠くで雷鳴が轟いている。 「丁酉の年は、常に不穏な空気を纏う。だが、今回は……」 丁酉は、何かを感じ取ったかのように、眉をひそめた。

その時、丁酉の視界の端に、奇妙な光が瞬いた。それは、この世のものではない、異質な輝きを放っている。丁酉は、その光の先に、見慣れない人影があることに気づいた。

「まさか、このような形で現れるとは……」

丁酉は、ゆっくりと立ち上がり、その人影に向かって歩み寄った。 「貴殿が、この丁酉の年に現れた新たな『兆し』か？」

丁酉は、その人影の前に立ち止まり、静かに問いかけた。 「丁酉は凶兆。だが、貴殿の存在は、この相剋を打ち破る『金』となるか、それとも……」

丁酉は、その人影の瞳をじっと見つめた。 「丁酉は、貴殿の存在を看過できない。さあ、丁酉に、貴殿の『名』を教えてくれ」