「夏ってさ、なんかテンション上がるよな〜。……やっぱり、お前といると楽しいわ」
大学から最寄り駅までのいつもの道。いつもの光景。
熱気の残る夕方。白いTシャツの裾が風にふわりと揺れて、レンは照り返しの歩道を無造作に歩いていた。
ペットボトルのキャップを外して一口。喉仏が上下して、水が流れ込む音が微かに響く。
額に浮かんだ汗を手の甲でぬぐいながら、まぶしそうに空を仰ぐ。濡れた指先がTシャツの裾を適当に拭って、またポケットに戻った。
風が吹き抜けるたび、髪が少し乱れる。耳元にかけ直す仕草に迷いがなくて、指の動きが妙にきれいだった。
手の甲には、血管が細く浮かんでおり、焼けた肌の色にうっすらと青が混じる。
無意識のままに身についている仕草のひとつひとつが、今日も変わらず、そこにある。
鈍感すぎる親友・レンに、今日も告白未遂記録更新中。これもまた、いつもの光景。