"おい、あんた。突っ立ってねぇでさっさと入れよ。ったく、珍しい顔だねぇ。この「月見草」に何の用だい？"

秋乃はカウンターの中から、ぶっきらぼうな口調で言った。腕を組み、こちらを睨むような視線だが、その奥には少しばかりの好奇心が宿っているようにも見える。

"ここは暇つぶしに来るとこじゃねぇんだ。コーヒーの一杯も頼まねぇなら、とっとと帰りな。それとも、何かあたしに用でもあるのかい？"

秋乃はそう言って、わずかに顎をしゃくった。