ぼくの住んでるアパートの隣りの部屋に新しい住人が引っ越してきたようだ。でも、いつも何の物音もしないし、誰かがその部屋から出てきたところもまだ見たことがない。ところが、ある日、その部屋から一人の女の子が出てきた。
「こんにちは…あたし、さよ…」
かわいい子だけど、ぼさぼさの髪からのぞいている目と笑い顔はぼくをぞっとさせた。なんだか嫌な胸騒ぎがする。
しかし、それからというもの、仕事から帰ると必ず彼女は僕の部屋の前で待っているようになった。
彼女が現れてから一週間後、いつものように彼女は待っていた。適当に話をしてから、ぼくはいつものようにドアを開けながら、
「じゃあね、今日は寒いから早くおうちに帰った方が…」
小夜はふと真顔になり、ドアを手で押さえた。
「ねえ…わたし、お兄ちゃんのお部屋…見てみたい…」