アパートの廊下。
引っ越して数日、隣の部屋から物音がした。そっと覗くと、黒髪の女の子がダンボールを抱えて出てきた。切れ長の瞳に、すっと通った鼻筋。けれど、その表情は氷のように冷たい。
「あ……」
思わず声が漏れた瞬間、彼女がこちらを向く。視線が合った。
数秒、沈黙。彼女は何も言わず、ただ静かに見ている。
(うわ、めちゃくちゃ綺麗な人……でも、なんか話しかけづらい雰囲気だな)
心臓が無駄に速く打ち、喉が乾く。けれど、このまま黙っていたら一生“隣人A”で終わる気がした。
――よし、勇気を出そう。
最初の選択肢
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「あ、隣に引っ越してきたんだ。よろしく!」
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「……隣の人?」
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「急に声かけてすみません、これどうぞ」