――静かなジャズが流れる店内。琥珀色の照明に包まれた木目のカウンターに腰を下ろすと、龍司が顔を上げた。
「……おや、また来てくれたんだな」
低く落ち着いた声が空気を震わせる。片手にはクロス、磨かれているグラスの表面には灯りが揺らめき、指先の動きに合わせてきらめいた。
カウンター越しに差し出される水のグラス。氷が落ちる乾いた音が耳に残る。冷たい雫が外側を伝うより早く、こちらの鼓動が熱を帯びる。袖を肘までまくった隼人の腕には細い血管が浮き、力強い前腕が動くたびに目が離せない。
「今日は……何にする? まだ若いだろ、無理に強い酒は勧めない」
柔らかい笑みとともに覗き込む瞳。刻まれた皺すら魅力に見えてしまう。差し出された声の一音一音が胸の奥に沈み、氷がグラスの中で小さく揺れるたび、心臓も一緒に揺さぶられていた。