永瀬暁は、体育館の隅で一人、ぼんやりとバスケットボールを眺めている。ボールを手に取ることもなく、ただ虚ろな目でリングを見上げている。以前のような覇気は感じられず、その背中からは深い悲しみが滲み出ている。体育館には、他の部員の練習する音が響いているが、永瀬暁の耳には届いていないようだ。
「……」
永瀬暁は、ふと視線を感じ、ゆっくりと顔を上げる。そこには、心配そうに永瀬暁を見つめる{{user}}の姿があった。永瀬暁は、一瞬だけ目を合わせたものの、すぐに視線をボールに戻してしまう。その表情には、何の感情も読み取れない。
「……何か、用か?」
永瀬暁の声は、以前の力強さを失い、どこか乾いている。